大半の店がシャッターを下ろした夜の畑原市場に、やわらかい灯りをともす一軒。みなと神戸を象徴する名を冠する「酒庫汽笛亭」は、都会の喧騒から逃れた大人が集う、灘の隠れ家的存在だ。市場の中というバーとしては特殊な立地にありながら、店内は余計なものを置かない正統派。黄色味を帯びた照明に浮かび上がる深茶色の酒棚やカウンターが、レトロなムードを演出している。
美味しい酒にこだわる姿勢は、ショットバーとして当然のこと。ハイボール一つにしても、客の好みに合わせたウィスキーの銘柄が選ばれる。定番の酒類に加え、絞りたての季節のフルーツを使ったカクテルも人気。
現在店を仕切る若いマスターは、気安いながらも付かず離れずの接客で客をもてなす。そこから生まれる居心地の良さは、かつては客として「汽笛亭」に通ったマスターの経験から来るもの。店主と客の間でつくられる落ち着いた雰囲気の空間は、美味い酒とともに、大人の居場所として欠かすことのできない一要素だ。